(株)大洋不動産

相続マインズ福岡

小峰 裕子

平成元年より不動産業に従事。不動産におけるすべての判断はオーナーご家族の幸せや将来設計に多大な影響を及ぼすことを実感する。1999年にCFP®資格取得、2000年にNPO法人相続アドバイザー協議会養成講座1期生として研修を受け、相続に強い不動産の専門家として不動産管理運営の相談業務を中心に、セミナー講師や不動産相続のサポート業務を行っている。
大洋不動産常務取締役・相続マインズ福岡代表
CFP®(1級ファイナンシャルプラン技能士)
CPM®(米国公認不動産経営管理士)

この執筆者の過去のコラム一覧

2023/12/10

相続登記が変わる!~「相続登記義務化」対策の切り札とは

令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。
所有者が誰かわからない土地が増えたことを理由に、任意であった相続登記を義務とする法改正がなされたのです。
これにより相続人は不動産の相続を知ったときから3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が課せられることになります。
この規定は過去の相続にも遡るため、お心当たりがあれば対応を考える必要があります。


法務省HPより

相続登記を困難にしているもの

相続登記ができない大きな要因のひとつとされるのは、遺産分割をめぐる協議の不調ではないかといわれています。
ある事例をご紹介いたします。

数年前のことです。
A子さん(仮)は80歳になるのを機に遺言を書こうと思い立ち、相談に来られました。ご主人を3年前に亡くし、長男さんとふたり暮らしです。
財産はご自宅の土地建物といくらかの預貯金でしたが、すべて長男さんに相続させたいとのご意向でした。
ところがお話を伺うと、ご自宅はご主人名義のままで相続登記をしていません。

理由は離れて暮らす長女さんにありました。
ご主人を亡くしたとき、A子さんは自宅は長男さん名義に相続登記をしようと考えたそうです。
しかし、それを告げられた長女さんが「私も分は?」と言って聞かなかったそうです。
取りあえずA子さん名義に登記しようにも、もはや長女さんは納得しません。
相続登記も遺言もできないまま、その後A子さんは施設に入所されました。

相続登記は全員一致の遺産分割協議書が必要に

相続登記をするには、遺産をどう分けるか相続人全員で話し合い、署名捺印した「遺産分割協議書」を作成して登記申請する必要があります。
つまり全員一致でなければ相続登記はできませんしたがってA子さんのような例は決して珍しくなく、財産の多少に関わらず起こり得る話です。

先妻のお子さんに相続があったことを伝えたくない、浪費癖のあるお子さんを話し合いに呼びたくない、行方不明者がいる、そもそも親が兄弟姉妹と争って占有した等々、寝た子を起こしたくないがために手続きが進まない、進められないのです。

実際には相続登記そのものは単なる手続きに過ぎないのですが、家族だけで解決できないことが多発すると容易に予測できます。
なぜなら、遺産分割協議書に全員が判を付くに至るまでが困難を極めるからです。

人の気持ちと法律が一致するとは限りません。
「相続登記の義務化」が及ぼす影響は小さくないはずです。

いま必要なのは家族会議

では今、取りかかるべき対策とは何でしょうか。
答えはひとつ「家族会議」です。

「人生会議」と表す専門家もいますが、財産に限らずどこでどのような余生を送りたいか、ご自身が元気なうちに考えを伝えて、そしてお子さんの気持ちを聴いてみることです。
その延長線上に財産の話題も上ることでしょう。

家族会議を重ねることで、お子さんの将来への不安やもめさせるような原因をなくすことこそ何よりも最善の対策であり、単なる手続きである相続登記をスムーズに行う手立てだと思います。

相続登記はもう放置できない

ちなみに、相続登記がなされていない不動産の売却はできません。
また金融機関への担保提供ができないため相続登記をしなければ借り入れもできません。

なお法定相続分による相続登記は、他の相続人の協力がなくてもできるとされています。(保存行為)
そのため相続人のなかにお金に困っている相続人がいる場合、その法定相続分を売却したり差し押さえられたりするかもしれません。
見ず知らずの共有者なんて避けるべき事態ですね。

「何から手を付けて良いかわからない」という方も多いことでしょう。
大洋不動産では定期的に専門家による無料相談会を開催していますので、ご利用なさってみてはいかがでしょうか。必ず糸口がみつかります。

また過去に遡った相続については、3年の猶予期間がありますが待ったなし。
それこそ複雑で専門家の助けが必要となるかもしれず、早めのご相談が必須です。

若い世代の不安をなくすために

日本人の平均年収は、400万円程度と25年前のそれとほとんど変わっていません。
なのに社会保険料は毎年上がり続け、天引きされて可処分所得はむしろ減っています
これからの日本を支える30~40代の若い世代が、将来やお金の不安を抱えているのは当然だといえます。

相続登記義務化スタートにあたり、今できることを考えてみませんか?
お子さんを不安にさせない、そしてもめさせないために。

※弁護士の江口正夫氏よるコラムもぜひお読みください。
「相続登記の義務化に対してどうすればよいか?」2023年4月掲載

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