2024/03/10
相続3代で普通の人?~財産を減らさない防衛計画
なぜ日本では大富豪一族が生まれないのか。それは相続税が原因ではないでしょうか。
「相続3代で財産はなくなる」との定説があるように、それくらい日本の相続税負担は世界と比較しても高いのです。
世界の相続税と日本
グラフは主要国の相続税負担率を示すもので、財務省ウェブサイトに掲載されています。
縦軸は相続税の課税価格に占める相続税額の割合、つまり負担率ですね。横軸は「課税価格」(基礎控除等を差し引いた額)を示しています。
黒い太線が日本です。点線は2015年の税法改正前のものですが、日本は課税価格が高くなればなるほど、負担率が重くなるようにできているのがわかります。
出典:財務省ウェブサイト
10億円ぐらいまではイギリスが1位ですが、実際は不動産が非課税になる場合などの減税措置があるため、亡くなる方のうち相続税が課税されるのはわずか4~5%ほどだそうです。
対する日本は9.6%(令和4年分における相続税の申告事績の概要・国税庁)。
いかに日本は負担が重いか、おわかり頂けると思います。
ちなみに、アメリカ(緑の線)については次のような注記があります。
「課税価格が日本円にして約36.6億円までは負担率が0%である。2018年から2025年までの時限措置として基礎控除額が500万ドル(7.1億円)から1,000万ドル(14.2億円)に拡大された」。
まさにアメリカンドリーム、大富豪一族が生まれるわけです。
増えた財産以上に相続税が?
では実際に相続でどのくらい財産は減るのか、シミュレーションしてみました。
利回りは自宅など収益を生まない不動産もあると仮定して、低くめにしています。
また配偶者に先立たれる、いわゆる1次相続では「配偶者の税額軽減」制度を適用して税負担を軽減すると思われるため、子供だけ(2人と仮定)が相続する2次相続での税負担を試算しました。(高精度計算サイト)
するとどうでしょう。相続税は1億9,710万円と計算されました。
運用して1億円増やしても、2億円近い相続税で財産が減ってしまうのです。これを繰り返せば、相続3代で普通の人というのもわからなくないです。
そこで一般的とされる財産防衛計画について、もう一度振り返ってみたいと思います。
防衛計画① 財産の組み替え
収益性が低い財産の割合が多ければ、財産が減るスピードはさらに加速します。
「都心に大きなお屋敷」「修繕費がかさむ割に家賃収入が少ないアパート」などは、収益性の高い財産への組み替えも選択肢です。
高値で売却できそうなら金融資産に替えて運用する、同じ不動産に買換えるなら値下がりのチャンスを逃がさないようにします。
防衛計画② 贈与
今年1月1日から、改正された「相続時精算課税制度」と「歴年贈与制度」の適用がスタートしています。
※制度詳細は税理士の鹿田幸子氏コラムをお読みください。
「令和 5年度税制改正大綱について」2023年1月掲載
長期にわたり贈与できる方は、暦年贈与で財産を圧縮します。
また短期間に多額の財産を贈与したい方や将来的に値上がりする財産の贈与は、相続時精算課税制度が有利と言われています。
いずれにしても、贈与は次世代の資産形成や相続税納税資金対策にも資するものです。他の贈与制度との併用も可能なようですから、ぜひ税理士に相談してみて下さい。
防衛計画③ 個人事業主から法人になる
不動産を管理する法人(プライベートカンパニー)を、家族だけで作ります。
いくつかパターンがありますが、「不動産所有方式」と呼ばれる形態が次の図です。
建物は法人に売却し、土地はオーナーが個人として法人に貸付ます。
家賃は法人に入りますから、利益が出れば法人税を払います。
個人事業主の場合、所得が増えるごとに税率も上がり、最高税率は45%です。
住民税は所得割の税率が一律10%ですから、併せて55%にも上ります。
これ、法人税率との差異が開けば、その分の税負担が軽くなりますね。
さらに給与として配偶者や子供や孫に分配すれば給与所得控除が使えますし、給与は使わず貯めておけば相続税の納税資金になります。「争族防止対策」効果も見込めそうですね。
ただし建物買取り資金の調達や運営費、社会保険などコストもかかりますので、メリットがあるかどうかの判断は必ず税理士にご相談ください。
ところで。政治家の資金団体に入っているお金は相続税がかからないということ、ご存じでしたか。多額の資金を丸々引き継げるのですから、世襲議員が多いのもわかります。
皮肉にも日本では、政治家になるのが富豪になる唯一の方法かもしれません。チクりとつぶやきたい、今年の確定申告でした。
なぜ日本では大富豪一族が生まれないのか。それは相続税が原因ではないでしょうか。
「相続3代で財産はなくなる」との定説があるように、それくらい日本の相続税負担は世界と比較しても高いのです。
世界の相続税と日本
グラフは主要国の相続税負担率を示すもので、財務省ウェブサイトに掲載されています。
縦軸は相続税の課税価格に占める相続税額の割合、つまり負担率ですね。横軸は「課税価格」(基礎控除等を差し引いた額)を示しています。
黒い太線が日本です。点線は2015年の税法改正前のものですが、日本は課税価格が高くなればなるほど、負担率が重くなるようにできているのがわかります。
出典:財務省ウェブサイト
10億円ぐらいまではイギリスが1位ですが、実際は不動産が非課税になる場合などの減税措置があるため、亡くなる方のうち相続税が課税されるのはわずか4~5%ほどだそうです。
対する日本は9.6%(令和4年分における相続税の申告事績の概要・国税庁)。
いかに日本は負担が重いか、おわかり頂けると思います。
ちなみに、アメリカ(緑の線)については次のような注記があります。
「課税価格が日本円にして約36.6億円までは負担率が0%である。2018年から2025年までの時限措置として基礎控除額が500万ドル(7.1億円)から1,000万ドル(14.2億円)に拡大された」。
まさにアメリカンドリーム、大富豪一族が生まれるわけです。
増えた財産以上に相続税が?
では実際に相続でどのくらい財産は減るのか、シミュレーションしてみました。
利回りは自宅など収益を生まない不動産もあると仮定して、低くめにしています。
また配偶者に先立たれる、いわゆる1次相続では「配偶者の税額軽減」制度を適用して税負担を軽減すると思われるため、子供だけ(2人と仮定)が相続する2次相続での税負担を試算しました。(高精度計算サイト)
するとどうでしょう。相続税は1億9,710万円と計算されました。
運用して1億円増やしても、2億円近い相続税で財産が減ってしまうのです。これを繰り返せば、相続3代で普通の人というのもわからなくないです。
そこで一般的とされる財産防衛計画について、もう一度振り返ってみたいと思います。
防衛計画① 財産の組み替え
収益性が低い財産の割合が多ければ、財産が減るスピードはさらに加速します。
「都心に大きなお屋敷」「修繕費がかさむ割に家賃収入が少ないアパート」などは、収益性の高い財産への組み替えも選択肢です。
高値で売却できそうなら金融資産に替えて運用する、同じ不動産に買換えるなら値下がりのチャンスを逃がさないようにします。
防衛計画② 贈与
今年1月1日から、改正された「相続時精算課税制度」と「歴年贈与制度」の適用がスタートしています。
※制度詳細は税理士の鹿田幸子氏コラムをお読みください。
「令和 5年度税制改正大綱について」2023年1月掲載
長期にわたり贈与できる方は、暦年贈与で財産を圧縮します。
また短期間に多額の財産を贈与したい方や将来的に値上がりする財産の贈与は、相続時精算課税制度が有利と言われています。
いずれにしても、贈与は次世代の資産形成や相続税納税資金対策にも資するものです。他の贈与制度との併用も可能なようですから、ぜひ税理士に相談してみて下さい。
防衛計画③ 個人事業主から法人になる
不動産を管理する法人(プライベートカンパニー)を、家族だけで作ります。
いくつかパターンがありますが、「不動産所有方式」と呼ばれる形態が次の図です。
建物は法人に売却し、土地はオーナーが個人として法人に貸付ます。
家賃は法人に入りますから、利益が出れば法人税を払います。
個人事業主の場合、所得が増えるごとに税率も上がり、最高税率は45%です。
住民税は所得割の税率が一律10%ですから、併せて55%にも上ります。
これ、法人税率との差異が開けば、その分の税負担が軽くなりますね。
さらに給与として配偶者や子供や孫に分配すれば給与所得控除が使えますし、給与は使わず貯めておけば相続税の納税資金になります。「争族防止対策」効果も見込めそうですね。
ただし建物買取り資金の調達や運営費、社会保険などコストもかかりますので、メリットがあるかどうかの判断は必ず税理士にご相談ください。
ところで。政治家の資金団体に入っているお金は相続税がかからないということ、ご存じでしたか。多額の資金を丸々引き継げるのですから、世襲議員が多いのもわかります。
皮肉にも日本では、政治家になるのが富豪になる唯一の方法かもしれません。チクりとつぶやきたい、今年の確定申告でした。
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