【まごころ通信】 第59話 取り分 by小峰裕子

「生活笑百科」というNHKの長寿番組、実は随分長いことファンで家にいるときは必ず観ています。暮らしのもめ事を漫才にしてゲストがジャッジ、弁護士に「先生どないなっとりますの?」というものです。

世相だなあと思うテーマのひとつに「相続」がありますが、近頃気になる言い回しがあります。それは遺産の相続分のことを「取り分」と言っていることです。相続では誰がどれくらいもらえるかについては「法定相続分」 といって法律で定められていますね。相続分は権利でもありますから「取り分」と言ってもかまわないのですが、ちょっと待った!その遺産を築いたのは自分じゃないですよね。

偶然にも去年から今年にかけて「親の預貯金」を元手に不動産投資を始めたいという、お子さん側からのご相談が続きました。親からすれば、子どもの未来のためにこれまで貯めた預貯金を使って欲しいという気持ちなのでしょう。お子さんは30才前後と若い方ばかりですが、きっと年齢を重ねるほどに親に深い感謝と尊敬の気持ちを持つことと思います。なぜなら親が一所懸命築いた預貯金は「取り分」という権利ではなく、与えて頂いた親心に他ならないからです。

「ではその預貯金を元手に借り入れをして○千万円の不動産オーナーに!レバレッジを効かせて収益性を高めましょう!」などと口のうまい営業マンにはならないでくださいね。それも間違いではありませんが、見通しの甘さから「資産家」が「悲惨家」になるのも不動産投資です。まず皆さんに望むことはオーナーと二人三脚で共に歩める実務家です。私たちにとってオーナーは複数でも、オーナーからすればたったひとつの管理会社なのです。