【まごころ通信】 第1話 「履きものを揃える」 by小峰裕子

「靴を脱いだら揃えましょう」

皆さんも子どもの頃、親や祖父母から言われたのではないでしょうか。次に履くときに履きやすいように、他人から見て見苦しくないように、というのが理由ですが、実は禅語の「脚下照顧」という言葉にその由来があるそうです。

「脚下照顧」という禅語の意味を調べてみました。脚下とは自分の足元のことです。つまり毎日の生活の中で自分の足元を顧みなさい、ということを表した言葉ですね。自分が置かれた立場や自分の姿をよく見極めなさいと教えてくれているわけです。

簡単そうで本当はむずかしい事かもしれません。例えば向いてない仕事を言いつけられて憂鬱になったり、自分中心の人に振り回されて泣きたくなったり、ストレスを感じてしまうことは誰でもあります。そんな時、自分が置かれている現状をつい、相手のせいにしてしまってはいませんか。苦しいときは自分が置かれた立場や自分の姿など、見つめる気持ちのゆとりなんてなくなってしまいがちなのです。

思い通りにいかないとき、人のせいにして理屈や不満ばかり言っているひとは、「私はゆとりがありません」と言っているのと同じです。思い通りにいかなくても、理想に届かなくても、あなたはあなたです。ならば一歩引くつもりで心にゆとりを持ってみませんか。そして自分の立ち位置を見つけてみましょう。そうすれば自分に軸ができて前に進めることでしょう。「履きものを揃える」、たったこれだけの小さな心のゆとりが生み出す力、結構すごいと私は思います。

はきものをそろえると 心も揃う

心が揃うと はきものも揃う

ぬぐ時に揃えておくと

はく時に 心が乱れない

だれかが乱しておいたら

だまってそろえておいてあげよう

そうすればきっと

世界中の人の心もそろうでしょう