【まごころ通信】 第26話 日本酒とお燗 by小峰裕子

わたしが若い頃、日本酒というと二日酔いしやすくて舌にベタベタした感じが残る、どちらかというばマイナスのイメージでした。これは戦時中、食糧不足から1本を3本に水増しして造っていた名残で、醸造用のアルコールや甘くするための水飴、化学調味料などを足した「良心的といえない」日本酒が多く出回っていたからでした。

いつの間にか日本酒離れが進み造り酒屋も半減、日本酒文化どん底時代です。それでも本物を知る人々の手により「大吟醸」「吟醸」「純米酒」とまじめに造られた日本酒の伝統は守られ、やがて復活を遂げたのはご存じの通りです。今では若い世代にも地酒を中心にファンが増え、手に入りにくい銘柄もあるようです。

日本酒は温度によって風味が変化する深みのあるお酒です。好みはありますが、米のうま味が強い純米酒は燗付けで、香りが強い大吟醸ならきりっと冷たくして飲むとおいしさが際立ちます。ただ、お酒は一度封を切ったら飲み切らないと味が変わります。それでほとんどのお店は、冷蔵庫で保管しています。お店で「冷や」を頼むと冷えたお酒が出てくることがありますが、「冷や」は常温のことで冷酒ではありません。お酒を暖めて欲しい時「人肌」と言いますが、それは35度前後、「温燗(ぬるかん)」が40度、「熱燗(あつかん)」は50度です。燗付けのしかたは湯煎が一般的ですが、電子レンジも便利なので自宅ではさぼってチンです。少し冷めやすいです。ちなみに、冷酒となると冷たさを感じる15度前後を「花冷え」、5度前後を「雪冷え」というそうです。

皆さんが好んで飲むお酒は何でしょうか。たまには日本酒で海の幸山の幸を肴にゆっくり盃を傾けるのもいいものですね。わたしも季節を感じたい時や大切な人達とゆっくり過ごしたいときは、日本酒を楽しんでいます。