【まごころ通信】 第28話 山が招いている by小峰裕子

今年春のレクレーションは山登りでした。山登りと言っても目的の三日月山は272mと低山ですから、大人も子供も一緒におしゃべりしながら楽しかったですね。

三日月山をはじめ、福岡市近郊の山々は頂上で博多湾が望める事も多く眺望が楽しめます。山道を歩きながら土の匂いを懐かしみ、木漏れ日に和み、鳥の鳴き声に耳を澄ませる、そして流れる雲の早さに自分は今、自然に抱かれていることの幸せを実感します。本当に楽しいです。

「どうせ下るのに何で登るのか」。そう言う人もいます。おそらく山以外に自然を感じる環境にいるか、まったく興味が無いかどちらかだろうと思います。だけどその人から、どうして山に登るのかと聞かれても断言ができません。「そこに山があるから」との答えは有名ですが、取材攻めの場でやけくそになって言った言葉との説もあります。実際に急登で息が上がってくると「もうダメだ、自分は何をしているんだ」と頭の中は半分以上後悔が占めていたりします。それでも「山が招いている」とでも言うのか、下山しながら今度はどこに登ろうかなんて、山を歩く、登るという行為にときめいてしまうのです。

福岡は街の中心部から海も山も近い類い希な都市です。関東だとサーフィンをしようとしたら千葉とか湘南とか、茨城だそうです。他県まで行くなんて、福岡では考えられないことですよね。海でもいい、山でもいい、時間調整の努力と辛抱の汗とほんの少しの幸運に恵まれたら、ぽかぽか陽気に体も心もリフレッシュできますよ。私たちは磁石のように自然が魅了してやまない街に暮らしているのです。