【まごころ通信】 第29話 無料相談の限界 by小峰裕子

最近は「ご相談無料」「無料セミナー開催」など、情報やサービスを無料で提供するところが増えました。大半は体験お試しを頂くことで多くの人たちにお客さまになって頂きたいという狙いがあるので、次の有料サービスへの誘導が行われています。

主催側には当然、目的があります。利用する側もそこは心得るべきで、個人情報の提供をしたことによるその後の営業はもちろん、無料で提供されるサービスには限界があることを知る必要もあると思います。

ある時のこと、セミナーにひとりの男性が参加されていました。60代後半で、質問されたり積極的な方でしたがその後の無料個別相談で怒って帰ってしまわれたのです。相談内容は「専門書を手引きに契約書を作ったが、法的に問題がないか、後々トラブルにならないか確認して欲しい」というものでした。応じられるものではありません。理由は「相談ではなく判断を求められたから」です。

専門性が高くても、知識に基づいた答えなら応じたでしょう。つまり無料でできる範囲は一般的な答えが限界だと言うことです。ひとつの契約書を作成するためには、個別的な要因をよく調べないと始めることはできないのです。セミナーの主催者は士業の先生方やFPなど手弁当で集まった10名足らず。「有料で先生に見てもらいましょう」と話しても「相談は無料と書いてある」の一点張り、翌日またご本人から電話があり、ご理解頂くのに半日費やしました。

皆さんの業務においても、そこは機転を働かせて下さい。よかれと思う対応が無責任になることもあるのです。士業の先生方とのいわゆる「業際問題」にも充分注意が必要です。