【まごころ通信】 第33話 言葉じゃなくて by小峰裕子

私たちは人と会話するとき、自然と言葉を選びながら話をします。ただ、言葉は自分を表現する手段ですがすべてではありません。「嬉しいです」「大丈夫です」「心配です」。心中のメッセージは言葉でなくとも相手には伝わるものです。

「目は口ほどにものを言う」ということわざがあります。視線、目つきは相手から観察されやすくなっているし、言葉より雄弁だったりします。どこを見ているのかで関心の強弱が伝わりますし、自信の有無においても案外見破られています。

友人(独身)が、お付き合いしている男性の事を話してくれました。ほろ酔い気分で食事をしていた時、「ある異変」に気付いたそうです。席はカウンターでした。以前の彼は上半身を彼女に向け、まっすぐ見つめて語りかけていたそうです。それが最近では顔だけ向けるか、彼女が話をしていても「時々別なところを見ている」という話。それこそ彼女と顔を合わせて大笑いしましたが、彼が意図的にそのような態度を取っているのなら人の心理を手玉に取る相当なワルに違いないでしょう。幸いなことにお付き合いは続いているようですが、視線は隠すことなく相手にメッセージを投げかける、正直なものだといえます。

相手のとの距離もそうです。取り方によって、どれだけ心を許しているか推し量ることができます。他にも身振り手振りや着ている服、何気なく選んだ持ち物からも、人は多くのメッセージを受け取ります。意識しておきたいのは言葉では表現しない、またはできない部分の大切さです。

言葉じゃなくて、人の心理というものは神秘的なくらい言葉以外の部分に大きく影響されていると思っています。