【まごころ通信】 第37話 屋台と博多っ子 by小峰裕子

博多と言えば「屋台」をイメージされる方も多いようです。博多の屋台は、リヤカーを土台にした折りたたみ式の箱の中にテーブルやネタケース、食器やガスコンロまで入っています。小屋ですよね。毎日同じ場所に運んできて立てたりたたんだり、出てない日は「大将どうしたのかな」と気になります。

仕事帰りにちょっとつまんで飲んで帰ったり、飲み足りないから仕上げに一杯とか、ラーメンはついでに?みたいな感じですから、特別美味しいという程のものではない(小峰説)のですが、暖簾をヒョイとくぐるだけの手軽さが、気取らずかしこまらずで良いのです。

ただ、屋台は銭湯と同じで入り方に流儀があります。まず、食べ終わっているのにだらだらおしゃべり、長居は御法度です。飲み過ぎも同じ、さっさと切り上げましょう。それから、注文は大将のタイミングを見計らってするといいです。狭い空間では、息の合った所作が求められます。また、あれこれ注文するとお勘定が高くなります。夕方どこからともなく現れる屋台。2~3人で「ちょっと寄っていかん?」という感じで、博多っ子は屋台と付き合っているのです。

以前は、当社に入社して1年がたつと屋台でねぎらったものです。もちろん実地体験を通じて、博多のナイトライフを楽しめるようになって欲しいからです。最近は、「名義貸し屋台の経営者公募」が話題ですが、屋台の営業は本当に大変です。子どもが後を継がないなら、勝手を知る従業員が後を継いで(いわゆる名義貸し)何が悪いのでしょうか。この問題では、名店がいくつも閉店しました。「役所はどうしたいとかいなね!」

博多っ子は怒っています。