【まごころ通信】 第68話   ホームグラウンドの証 by小峰裕子

夏休みも終わり、子供達の元気な声が学校に戻ってきました。「行ってきまーす」「行ってらっしゃい!」。慌ただしい朝の光景です。帰ってくれば「ただいま」「お帰りなさい」。相手がいるから、かけることができる素敵な挨拶言葉です。

「行って」+「来ます」=行ってきます。
「行って」+「いらっしゃい」=行ってらっしゃい。
これ、由来はふたつの言葉がひとつになった日本語で、外国にはこういう決まったフレーズはないそうです。面白いですね。

日本語は、対話から日常表現が成り立つ言葉が多く存在するらしいです。例えばそのひとつ、「行ってきます」は「○○に行きます」、だけど無事に「帰って来ます」と、その場にいる人に必ず戻ってくることを約束している対話が短く略されている言葉なのだとか。一方の「行ってらっしゃい」の「いらっしゃい」は、店先で「いらっしゃい!いらっしゃい!」と呼びかけるように「来て!」の尊敬語です。つまり「行って」も無事この場所に「帰って来て」「帰って来て」と願う言葉なんですね。そして帰ってきたときは「只今」そのままに、無事に戻ってきてくれることを「お帰りなさい」「お帰りなさい」と唱えて待つ人に対して、「ただいま!」と、たった今戻ったことを告げているわけです。案じてくれる相手への感謝の気持ち、言葉の温もりを感じます。

「行ってきます」「行ってらっしゃい」「ただいま」「お帰りなさい」。そりゃ、なじみの焼き鳥屋さんから声かけられることもありますよ。近所のお子さんと「お帰り」「あ、ども」なんてやり取りも。ただ良い言葉ですよね。家族でも他人同士でも、何気なく挨拶を交わすその場所はホームグラウンドである証です。

 

大洋不動産社内報「こまめくん第78号」より抜粋